人々に100年近く愛される、
富山県の老舗米菓メーカーが守ってきたもの。

人々に100年近く愛される、富山県の老舗米菓メーカーが守ってきたもの。

富山県といえば、「白エビ」。その白エビを贅沢に使い、富山県産のうるち米を使って焼き上げた「しろえびせんべい」。私はこれが大好きで、富山県へ行ったらお土産で必ず買ってしまいます。

この「しろえびせんべい」を開発したのが、1924年(大正13年)の創業の老舗米菓メーカー「日の出屋製菓産業株式会社」。代表の川合さんから、富山県との深いつながりや意外な歴史についてお伺いすることができました。

川合声一(かわいせいいち)

川合声一(かわいせいいち)

1954年、富山県南砺市福光新町出身。1978年に老舗米菓メーカー「日の出屋製菓産業株式会社」に入社。専務取締役を経て1999年に代表取締役社長に就任。2014年に会長に就任後、2019年からは社長も兼任。2018年から南砺市商工会長を務めている。2020年に黄綬褒章受章。

富山県民に親しまれる「かっきゃま」って?

日の出屋製菓の創業からこれまでの歴史について教えて下さい。

川合声一さん(以下、川合):1924年に、私の祖父母が富山県福光町新町(現南砺市福光新町)で創業し、もち米を原料とした「かきやま」の製造を始めました。

「かきやま」ですか?

川合:富山県西部ではあられ、おかき、せんべいといった米菓全般のことを「かきやま」というのです。地域によっては「かっきゃま」と少し訛りが強くなるところもあります。

「かっきゃま」・・・なんだかちょっとかわいい響きです。

川合:地元では普通に使われる言葉なので、方言と意識している方のほうが少ないかもしれません。

1935年には原料を毎日1トン確保して本格的に製造し、「手焼きあられ」として全国的に知れ渡るようになりました。

1955年には祖父で創業者の川合宣之の強い意志により東京進出を果たしました。戦後の復興の勢いでもち米の収穫量が著しく増加したことで、製造量も増えていきます。1964年には、もち米を原料としたあられやかきもちに加え、うるち米を原料とした「せんべい」の製造も始めました。

そこから、「しろえびせんべい」の製造へとつながっていったのですね。

川合:実は、「しろえびせんべい」は2000年頃からの販売で、それまではせんべいよりも、あられやおかきのほうが多く作られていたんです。

それは意外でした。「しろえびせんべい」だけでなく、あられやおかきも食べてみなくてはいけませんね!

▲日の出屋製菓で製造されているかきやまの数々。

 

長年愛される秘密は◯◯にあった!

日の出屋製菓さんの米菓が、長年に渡り愛されている理由はどこにあるのでしょうか?

川合:原材料へのこだわりが一番大きいと思っています。弊社では、富山県産のお米しか使っていません。

富山県は水田率日本一というだけあって、水が豊かできれいです。創業の地、福光の水田にも、万葉のふるさとと共生する小矢部川の水が流れ込んでいます。

そこで作られた「大正もち」を品種改良した「新大正もち米」は、粘りとコシの強さが特徴で風味も豊かです。この「新大正もち米」は、全国的にももち米の最高級品と呼び声が高く、県外ではなかなか手に入らないことから「幻のもち」、「もち米の王様」とも呼ばれています。

そのもち米を、自社の低温倉庫で水分を保ち、つくる直前に必要な分だけ精米するなど、鮮度にもこだわっています。

なるほど。豊かな水と最高品質の原材料、そして技術が、長年愛される商品の裏側にはあったのですね。

川合:そうですね。それと、「かきやま」という商品は手土産としても重宝されるのです。日持ちがするし、嫌いな人はあまりいません。何百と種類もありますから、毎回違ったものを持って行くことができます。

「日の出屋製菓の『かきやま』を食べたら、他のものが食べられなくなった」とお客様からお声をいただくこともあり、誇りに感じています。

▲「私のおすすめは『鬼楽煎』。甘辛い味がやみつきになります」(川合さん)。

 

伝統を守り、次世代へつなげる

再来年には創業100周年を迎えるそうですね。

川合:日の出屋製菓は、富山県の歴史的人物とも深い関わりがあり、100周年に向けてそういった資料も整理しています。

たとえば、戦時疎開のため福光に移住した世界的な板画家の棟方志功氏と川合宣之は交流があり、創作活動の支援などをしていました。そのため絵を書いてもらったこともあり、今でも一部の商品の包装紙になっています。

すごいですね!今も昔も地域に根付いているのだと感じます。日の出屋製菓さんが一番大事にしているのはどんなことでしょうか?

川合:それは、富山県の方々やお客様とのつながりですね。

「絆の経営」という言葉を経営理念に掲げているのですが、人や自然、農業や食文化、都会と田舎など、さまざまなものを結び付ける存在として弊社の商品や店舗などが役に立っていきたいという思いが込められています。

また、職人の経験と勘で培われてきた伝統的な製法をこれまで大事にしてきました。最近では、東京の下町のお煎餅屋さんもお店を畳んでしまうところも多く、弊社で作らなければ昔ながらの本格的な「かきやま」は、世の中からなくなってしまうかもしれません。

昭和30〜40年代に作っていたような手作り感のあるものを復活させたいと思い、現在商品開発を進めています。

今後やっていきたいことは他にどんなことがありますか?

川合:富山県内にあるようなゆっくりと座って食べられるスペースもある大きなお店を都内にも作りたいと思っています。

立山本店にはカフェもあり、焼きたての団子、おこわやしろえびせんべいソフトクリームも販売しています。今後はこういった飲食事業の展開にも力を入れていく予定です。

▲立山IC近くにある立山本店。2階展望デッキからは雄大な立山連峰を見渡せる。

 

富山県内には他にどんな店舗があるのでしょう?

川合:南砺市福光新町のかきやま総本舗のある通りは、昭和にタイムスリップしたような雰囲気で、とてもおもしろいですよ。福光新町というのは、江戸時代に商人が集まって作った町です。伝統的な商家の建物が点在し、昔の面影を残しています。

▲1968年にオープンした、南砺市福光新町のかきやま総本舗(福光新町店)。

 

川合:来年3月に富山駅前で「おこめぢゃや」というお店をオープンさせます。焼きたての団子やおこわ、棒茶を楽しめるカジュアルなお店です。

今後も富山県のお米を利用し、新しいものをどんどん作っていきたいです。たとえば、お米を使ったカステラなども考えています。

日の出屋製菓の築いてきた伝統を大事にしながら、次の世代の方々にも長く愛されるように発展していけたらと思います。

取材を終えて

日の出屋製菓さんが、品づくりの理念として掲げているのは「類ありて比なし」。 誰にも真似できない米菓の製造には、川合さんが先代から貫いてきた伝統製法と原材料へのこだわり、地域への愛があるのだとわかりました。

早速、おかきを食べてみると、香ばしい醤油の味と固めの食感が懐かしく、「しろえびせんべい」とはまた違った魅力が・・・。「富山県へ行った際には、日の出屋製菓誕生の地、福光にもぜひ訪れたい!」と思った今回の取材でした。

▼日の出屋製菓産業株式会社についてはこちら!

https://www.hinodeya-seika.com/

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