全国で愛されるヒット商品の仕掛人。
そのアイデアの源泉は?

全国で愛されるヒット商品の仕掛人。そのアイデアの源泉は?

物を運ぶときに便利な、滑り止めのイボイボがついた手袋。きっと誰もが一度は使ったことあるんじゃないでしょうか?

そんな滑り止めつき手袋を改良開発したのが、富山県にある『丸和ケミカル』の木田博久会長です。

創業から40年。数々のヒット商品を生み出してきた会社の道のりや、現在新たに力を入れていることなどをお聞きしました。

木田博久(きだ ひろひさ)

木田博久(きだ ひろひさ)

丸和ケミカル株式会社 代表取締役会長。1941年富山県南砺市利賀村阿別当に生まれる。勝星産業株式会社の常務取締役として商品開発や特許の取得、営業活動全般の指揮を取り、1980年に独立。作業現場のニーズや社会課題の解決に役立つ商品を開発し続けている。

“滑り止め×名前入り”世の中になかった商品を作る

私たちにも馴染み深い滑り止め手袋ですが、開発当時のことを教えて下さい。

木田:元々、私の叔父が『勝星編物化工』という会社をやっておりました。1963年、21歳のときにそこへ入社し、叔父とともに開発したのが、各種改良滑り止め手袋です。

そしてその後、札幌で冬季オリンピックがありました。商社に“社名入り”の滑り止め手袋を配ったところ、これがとても良い宣伝になったんです。世の中はカラーテレビが台頭した時代でしたから、テレビに映ったパールカラー粒の手袋の存在が一気に有名になり、伊勢丹や丸紅、自動車業界、ビール業界へと広がり、ぐんぐん売上を伸ばしていきました。

滑り止めだけでなく、名前が入ることでより宣伝効果も加わったんですね!

木田:ひとつの会社がノベルティで手袋を配ると、その競合他社も「作りたい!」となりますから。その流れに乗って、JA宮崎のシイタケ連合や自衛隊、森林組合などで幅広く採用され、全国各地で使用されるようになりました。

他にも、タクシーやバスの運転手用の手袋や、滑り止めつきのベビーソックスなども開発しました。創業から10年間で8件以上の特許を取得し、お客様からも信頼を得られるようになっていきました。

▲事務所には、発明奨励賞をはじめとする多数の賞状が。

 

丸和ケミカルが誇る、樹脂と繊維を扱う技術力

順風満帆に思われる木田さんの経営者としての人生ですが、これまで困難なことはありましたか?

木田:今振り返ってみると、1971年に滑り止め手袋の特許が切れたときは、各メーカーの参入がありましたし、1980年に独立したときは先のことがわからないという状況で、緊張感がありましたね。

しかしどんなに窮地に立たされたときでも、ランチェスター戦略の元、状況を乗り切ってきました。

ランチェスター戦略ですか?

木田:つまり、“弱者が勝つための戦術”です。総合的なナンバーワンを目指すのではなく、特定の需要を持つ小さなマーケットでのシェアナンバーワンを目指します。

大企業ではカバーしきれない細かなニーズにも応えながら独創性のある商品を開発し、新たな市場を開拓してきました。その結果、他社との圧倒的な差別化に成功し、設立8年目で年商9億円に達しました。

▲製造現場のニーズに応えたアイデア商品の数々。

 

細かなニーズの発掘や研究心が、今日の丸和ケミカルさんを創り上げてきたのですね。木田さんの思う、会社の一番の強みってどんなところでしょう?

木田:やはり一番は、技術です。丸和ケミカルというのは樹脂と繊維のコラボレーションのメーカーであり、それを一本の軸としてやってきました。繊維にアクリルやシリコンといった樹脂を付ける技術はなかなか簡単に真似できるものではありません。

商品については、3つの要素に重きをおいています。ハイクオリティ、ロープライス、そして技術力があること。言葉にするのは簡単ですが、これまで蓄積した知識と経験があるからこそ、実践できることです。

▲滑り止め手袋の製造工場の様子。

 

『欲深き 人の心と降る雪は 積もるにつれて 道を失う』

これは、高橋泥舟という幕末の武士の有名な短歌ですが、商品開発や経営をするのも、欲だけではいけません。正しい道を見失わずに進むためには、人や社会のために何ができるか考え、前向きに意欲を持って働くことが大事だと思っています。

環境に優しい安全な商品で、社会課題に寄り添いたい

商品開発の際、どういったところからアイデアが出てくるのでしょう?

木田:製造現場のニーズや社会課題に応えることを常に意識して、世の中にとって必要な商品を考案しています。

今、全国の消防団は人手不足で困っています。そこで、全国消防イメージキャラクターの『消太くん』の軍手を配布して、参加者の誘致につなげることができればと思い見本を作りました。

社会課題の解決に向けた商品開発の例は、手袋だけではありません。現在はコロナの収束が課題ですから、抗菌、制菌の機能を兼ね備えた商品は重要です。熱可塑性エラストマーという特殊な技術は、布やプラスチックダンボールなどあらゆるものに、滑り止め加工を施すことができます。

その技術を使って、不織布にシリコンボツ滑り止め加工を施し、製法特許も取得しました。ホテルの枕やベッドに気軽に使用できるものや、飲食店で肉に菌が付着するのを防げるシリコン加工の抗菌シートなどは、今後商品化を考えています。

プラスチックダンボールにエラストマー樹脂滑り止め加工(特許取得)をした商品は、災害が起きたとき、避難所でござ代わりに敷くことができますし、運送会社が配達時にこの上に荷物を置いたり、さまざまな場面で役立っています。

社会にとってどんなものが必要か、常に先読みしているんですね。今後の開発について教えて下さい。

木田:シリコンを使った開発に力を入れていきたいと思っています。私は20年前、これからの時代は地球環境への配慮が重視されていくと考え、他の化学材料と比べて含有炭素率が極めて少なく環境へも優しいシリコンに注目し、研究をしてきました。

シリコンは扱うのが非常にむずかしい物質でもあり、その使用のハードルは高いのですが、長年の研究と会社の信頼もあり、使用特許を取得することができました。

電気自動車のエンジンにも必要な物質ですし、医療の場でも使われているシリコンは、安全性も高く、今後の世の中には欠かせない存在になるとますます感じています。

カーボンニュートラルの時代を目指して、積み重ねてきた知識と経験を活かし、独創性のあるアイデアで、安全で便利な商品をこれからも開発していきたいと思っています。

▲息子であり代表取締役社長の木田博之さんと。

 

木田さん、ありがとうございました!

取材を終えて

世の中のニーズを探り、商品開発の視点から社会課題の解決に立ち向かう木田さん。生み出された商品は、働く人々の現場で長く親しまれ、なくてはならない必須アイテムとなっています。最新の技術を使い、今後は一体どんな商品が生まれるのか、想像してみるとちょっとワクワクする、丸和ケミカルの取材でした。

▼丸和ケミカルについてもっと知りたい方はこちら!

https://www.e-maruwa.biz/

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