富山グルメの代表格 富山県の鱒すし

駅弁人気トップクラス・富山グルメの代表格 富山の鱒すし


春を告げる使者・サクラマスを使った郷土料理、鱒寿司。駅弁としても全国に知られる富山の郷土食です。各地のデパートや駅弁フェアなどで開催される全国駅弁大会では、常に人気トップクラスの富山グルメの代表格です。
もともとは、鱒寿司に使う鱒は神通川に遡上してきたサクラマスを使用していましたが、現在では遡上するサクラマスが少なくなったことと、需要が増えたことから主に外国産の鱒類、北海道産のものが使用されています。
富山県内には、駅弁で知られる源(みなもと)をはじめ、数十軒のます寿し店があり、伝統の味を競い合っています。秘伝の味、熟成の技、店の誇りを食べ比べてみるのも富山旅の楽しみ方の一つでもあります。
最近では、冷凍技術の向上で「冷凍ます寿し」も販売されています。ネットショッピングでの取り扱いも盛んなため、それぞれの味をお取り寄せしてご自宅で味わうこともできます。

鱒寿司の歴史

江戸時代には徳川将軍吉宗にも献上され、吉宗の絶賛を受けたというエピソードが現在のます寿しの起源として語られています。ここで、ます寿しの歴史について紹介してみたいと思います。

富山城と桜 写真提供:公益社団法人とやま観光推進機構

富山市街地の西を流れる神通川(じんつうがわ)。古くからその流れは水運に利用され、川舟でアユやマスなどを獲る川魚漁が行われてきました。
16世紀、越中守護代の神保長職(じんぼ ながもと)はこの川の東岸に城を築き、その後、越中国に封じられた佐々成政(さっさ なりまさ)は、神通川の蛇行を天然の外堀に見
立て、富山城を堅固な浮城(うきしろ)に。やがて、成政は富山城を去り、越中は前田家が支配する地となりました。
富山藩初代藩主・前田利次(まえだ としつぐ)は、神通川に六十四艘の川舟を鎖でつなぎ、その上に板を渡した「船橋」を架け、長さ約430メートルもの船橋は、立山と並ぶ越中一の名所となりました。
神通川に架かる船橋の景色は、江戸時代の絵師、歌川広重(うたがわ ひろしげ)によっても描かれ、幕末になると、船橋を描いた売薬版画も数多く作られ、越中売薬によって諸国に広められることとなりました。現在も、ます寿しの掛け紙には、船橋の図柄が好んで用いられています。船橋の絵の中には、「あゆのすし」のノボリを掲げ、往来する旅人に寿しを売る茶屋を描いたものもあり、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)は、紀行小説『金草蛙」の中で「あまり美味なので、皆ほっぺたを落とし、あたりにはほっぺたが散乱していた」と、富山の寿しのうまさを面白おかしく伝えました。

なれ寿しから、押し寿しへ。吉村新八「料理侍」のレシピ

『越中史料』第2巻には、江戸中期の享保年間、富山藩に吉村新八(よしむら しんぱち)という武士がいて、新八は、藩士としての勤めとともに、割烹の術、つまり料理の研究にもいそしんでいました。「藩内に料理上手の侍がいる」。その噂を耳にした藩主・前田利興(まえだ としおき)は、新八に将軍家への献上料理を考案するよう命じた。命を受けて新八が試作したのは、神通川のアユを使ったなれ寿し。米飯と魚を漬け込み、発酵熟成させた保存食の一種だったのです。
利興はその味を大変気に入り、鮎のなれ寿しは江戸城に運ばれ、八代将軍徳川吉宗を大いに喜ばせたといわれています。
新八はレシピを書き残し、そこには「塩漬けの鮎を酒で洗い、米飯に2日間ばかり漬け込んだ後、献上の前日に米を取り除き、酒と塩で味付けした新しい飯を加えた」とあります。
なれ寿しにひと手間を加え、魚と飯の双方の美味しさを味わえるようにした「料理侍」の創意。その味へのこだわりは、やがて、ます寿しにも受け継がれていくこととなりました。

富山停車場に登場した名物弁当 鱒寿司とは

酢の量産が始まった江戸後期、なれ寿しに代わり、飯に酢を加えて手早く味わう早寿しが流行しました。やがて、富山のなれ寿しも時代とともに変化し、幕末から明治にかけて、現在のます寿しの原型が誕生したと考えられています。
ます寿しの容器である「曲げ物」にも、歴史があり、売薬の練り薬を入れる器だった曲げ物が、ます寿しの容器として使われるようになったのは明治の中頃だったそう。頑丈さや密閉性、清潔さ、持ち運びのしやすさから、それまで使われていた四角い桶から丸い形に定着していきました。
明治41年、北陸線が富山市まで延伸され、現在の富山駅の位置に停車場が開業。当時、駅前でホテルを経営していた源金一郎(みなもと きんいちろう)は、富山ならではの土産として、郷土料理のます寿しを弁当にして販売することを思い立つ。駅弁のます寿しは乗降客の評判を呼び、鉄道網が全国に張り巡らされるとともに、富山グルメの代表格として、各地にその美味しさをとどろかせていくこととなりました。

店ごとに異なるこだわりの鱒寿司の作り方

富山市の中心部を流れる松川(まつかわ)。桜の名所としても知られるこの川は、明治34年の工事で西に河道を変えた神通川の名残りとなり、かつて船橋がかけられていた界わいには、現在も何軒もの鱒寿司販売店が並びます。予約注文の店も多く、早々に「売り切れ」となる店も多いそうです。

松川の桜 写真提供:公益社団法人とやま観光推進機構

ます寿しの仕込みは早朝から始まります。炊きあがったばかりのご飯に、お店秘伝の調味酢を加えて酢飯をつくります。その酢飯を、曲げ物に敷いた色つやのいい笹の上に手際よく詰めた後、丁寧に下ごしらえし、秘伝の調味液に漬けこんでおいたマスの身を乗せ、重石で寝かせます。
ます寿しの味には、ひとつとして同じものがなく、味付けや押し加減など、お店ごとに個性が見られるので、ひいきにしている鱒寿司店を語れるようになると、富山県民として一人前です。富山へ旅行の際は、それぞれのお店の鱒寿司を食べ比べ、自分で「鱒寿司ランキング」をつけてみるのも富山旅の楽しみとなりそうです。

時を超えて息づくもてなしの心 富山グルメ代表格

写真提供:公益社団法人とやま観光推進機構

「鱒寿し」は、木製の曲物(わっぱ)の底に放射線状に笹を敷き、塩漬け後に味付けをした鱒の切り身をその上に並べます。そこに酢めしを押しながら詰め、笹を折り曲げて包み込み、その上から重石をします。
通常は曲物の上下に青竹をあて、ゴムなどで締めた状態で流通しています。一般に曲物の中に笹で包まれた状態のものが一つのものと、二つ重なっているもの(二段重ね)があります。

写真提供:公益社団法人とやま観光推進機構

鱒寿司の賞味期限は、昔は冬場で一週間、夏場でも3、4日間は日持ちする食品でしたが、近年は消費者の嗜好の変化もあって押しも酢も弱い生寿司に近いものも生まれています。
いまや、富山土産として定番となったます寿し。
お中元やお歳暮など、贈答品としての引き合いも多く、贈り先に届くまで1~2日かかります。その間に魚や酢飯がほどよく熟成し、食べごろとなります。
富山を旅立つ人へ、遠くに住む人へ。ます寿しには、いつの時代も越中人のもてなしの心が込められています。

主な富山の鱒寿司店一覧

写真提供:公益社団法人とやま観光推進機構

株式会社 青山総本舗
富山県富山市新富町1-4-6
TEL.076-432-5324
http://www.masuzusi.com/

株式会社 今井商店
富山県富山市石倉町1-30
TEL.076-421-2319
http://www.office-web.jp/shop/imaishouten/

株式会社 川上鱒寿し店
富山県富山市丸の内1-2-6
TEL.076-432-5129
https://masuzushiten.com/

有限会社 小林鱒寿し店
富山県富山市東町1-3-7
TEL.076-432-5405

株式会社 せきの屋
富山県富山市七軒町4-11
TEL.076-432-5104
http://www.masuzushi.co.jp/

鱒の寿し 関野屋
富山県富山市諏訪川原3-4-12
TEL.076-421-0439
https://syoemon.com/

株式会社 高田屋
富山市丸の内1-1-13 TEL.076-432-4774
https://takataya.biz/

有限会社 高芳
富山県富山市本町3-29
TEL.076-441-2724
http://www.takayoshi-masuzushi.com/

株式会社 千歳(ちとせ)
富山県富山市鴨島2区887
TEL.076-432-2515
http://www.masunosushi.com/

鱒寿し本舗 なかの屋
富山県富山市田中町5-1-12
TEL.076-424-4152

なみき鯖寿し店
富山県富山市南田町2-2-18
TEL.076-425-6780

鱒の寿し前留
富山県富山市丸の内1-3
TEL.076-441-4544

ますのすし本舗 源(株式会社 源)
富山県富山市南央町37-6
TEL. 0120-29-3104
http://www.minamoto.co.jp/

株式会社 吉田屋鱒寿し本舗
富山県富山市安野屋町2-6-6
TEL.076-421-6383
http://www.masunosusi.com/

有限会社 味の仁義
富山県富山市小中160
TEL.076-429-0801
http://www.sasayosi.com/

有磯きときと庵
富山県黒部市宇奈月温泉461-3
TEL.0765-62-2008
http://www.ariiso.eei.jp/

株式会社 植万
富山県黒部市三日市3646
TEL.0765-52-0229
http://www.ueman.co.jp/

魚づ鱒寿し店
富山県魚津市駅前新町7-1
TEL.0765-24-3761

大多屋鱒の寿し店
富山県富山市西中野町2-19-11
TEL.076-425-5100
http://ootaya.info/

小矢部サービスステーション株式会社
富山県小矢部市浅地135-2
TEL.0766-61-4003

有限会社 寿々屋
富山県富山市音羽町1-5-4
TEL.076-492-5887
http://www.e-suzuya.co.jp/

株式会社 創元
富山県黒部市宇奈月温泉330-22
TEL.0765-62-1266

株式会社 竹勘
富山県富山市掛尾町256-1
TEL.076-495-2505
http://www.takekan.net/

ニューオータニ高岡フード株式会社
富山県高岡市六家字若の宮1701-1
TEL.0766-31-5131
http://www.masunosushi-toyama.com/

鱒寿し 紀雅本舗
富山県富山市上本町8-6
TEL.076-421-1324

株式会社 まつ川
富山県富山市旅籠町2-10
TEL.076-494-9200
http://matukawa.biz/

富山ます寿し協同組合
http://www.toyama-masuzushi.or.jp/

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